NAK材は大同特殊鋼が開発したプリハードン鋼であり、金型製作において非常に重要な役割を果たしています。この材料は鉄を主成分とし、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)などの合金元素を含んでいます。NAK材の名称は、これらの合金元素の頭文字から取られており、Ni(ニッケル)、Al(アルミニウム)、K(ドイツ語でCuを表すKupfer)の組み合わせです。
NAK材の最大の特徴は、時効硬化処理によってHRC37~43程度の均一な硬度を持ちながらも、優れた被削性を備えていることです。通常、このような硬度を持つ材料は加工が難しいものですが、NAK材は比較的容易に切削加工ができるため、精密な金型製作に適しています。
NAK材には主に「NAK55」と「NAK80」の2種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。
NAK55は、硫黄(S)を微量に含んでおり、これにより切削性が向上しています。HRC40程度の硬度を持ちながらも、S45Cなどの一般的な鋼材と同等の切削性を示すため、複雑な形状の金型製作に適しています。NAK55は特にプラスチック金型の製作に広く使用されており、その優れた加工性から製造コストの削減と納期短縮に貢献しています。
一方、NAK80は1980年に誕生した材料で、NAK55と比較して硫黄を含んでいないことが最大の違いです。このため切削性はNAK55よりもやや劣りますが、鏡面磨き性に優れているという特長があります。NAK80は特に高品質な表面仕上げが求められる金型に適しており、光沢のある製品を製造するための金型材料として高い評価を得ています。
以下に両者の特性を比較表で示します:
特性 | NAK55 | NAK80 |
---|---|---|
硬度 | HRC37~43 | |
切削性 | 非常に良好 | 良好 |
鏡面磨き性 | 良好 | 非常に良好 |
主な用途 | プラスチック金型全般 | 高品質表面仕上げ金型 |
NAK材はどちらも国内シェアNo.1を誇るプリハードン鋼であり、40HRCレベルのプラスチック金型用鋼として広く認知されています。
NAK材は高硬度でありながら被削性に優れていますが、最適な加工結果を得るためにはいくつかのポイントに注意する必要があります。
NAK材はHRC40程度の硬度がありながらも、切削性に優れているため加工歪みが少なく、高精度な部品製作が可能です。また、熱処理の必要がないため、熱処理による歪みが発生せず、平面度などの精度向上とリードタイムの短縮によるコストダウンにつながります。
NAK材は既にプリハードン処理されているため、基本的には追加の熱処理は不要です。しかし、用途によっては表面硬度を向上させるための処理が行われることがあります。
熱処理について
NAK材は時効硬化型の鋼であり、HRC40程度の硬度しか得られません。そのため、通常の焼入れ焼き戻しによって硬度を上げることはできません。より高い硬度が必要な場合は、窒化処理を行うことで表面硬度を向上させることが可能です。
窒化処理は鋼の表面に窒素を浸透させて硬化させる方法で、NAK材の表面硬度を大幅に向上させることができます。これにより、耐摩耗性が求められる部分に対して効果的な処理となります。
表面処理について
NAK材はアルマイト処理以外のほとんどのめっき処理に対応しています。めっき処理は特別な前処理を必要とせず、通常の鉄材と同様の方法で行うことができます。
NAK材は錆びにくい特性も持っており、水にさらされるプラスチック金型にも適しています。これは合金元素の効果によるもので、長期使用における金型のメンテナンス頻度を減らすことができます。
NAK材を金属加工に採用する際には、その長所と短所を理解しておくことが重要です。
長所:
短所:
NAK材の長所と短所を理解し、用途に応じて適切に選択することで、効率的な金属加工と高品質な製品製造が可能になります。
NAK材は様々な金属加工の現場で活用されています。ここでは実際の加工事例を紹介し、その応用範囲について解説します。
長尺プレート部品の加工事例
厚み15mm、長さ3000mmのNAK55長尺プレート部品の加工例では、両サイドに合計60か所の穴加工と中央部に幅15mm、深さ7mmの溝加工が施されています。このような長尺部品では加工時に歪みが発生しやすいですが、NAK材の特性と適切な加工技術により、加工途中での歪取り工程を行うことで底面の平面度を50ミクロンまでに仕上げることができました。
長尺レール部品の加工事例
厚み12mm、長さ1200mmのNAK55長尺レール部品では、両サイドの段落ち部がレール箇所として重要なポイントとなります。この部品では底面に対しての平行度が20ミクロン以内という高精度を確保しています。NAK55の高い硬度により、耐摩耗性と耐圧性が向上し、レール部品としての寿命が大幅に延びています。
NAK材の応用分野
NAK材は以下のような分野で広く応用されています:
NAK材の特性を活かした加工事例は多岐にわたり、特に高精度・高品質が求められる分野での採用が進んでいます。材料選定の際には、加工の難易度や要求される精度、使用環境などを考慮して、NAK55とNAK80を適切に選択することが重要です。
NAK材を使用した金属加工プロジェクトを成功させるためには、材料の調達方法と加工コストの最適化が重要なポイントとなります。ここでは、NAK材の調達における注意点とコスト最適化のための戦略について解説します。
NAK材の調達
NAK材は大同特殊鋼の登録商標であり、正規品を調達することが品質保証の観点から重要です。NAK、NAK80、NAK55は日本における大同特殊鋼株式会社の登録商標であり、中国などの海外でも商標登録されています。模倣品や類似品には注意が必要です。
調達の際には以下の点に注意しましょう:
加工コストの最適化
NAK材は一般的な構造用鋼と比較すると材料コストは高くなりますが、トータルコストでは優位性を持つ場合が多いです。以下の点を考慮してコスト最適化を図りましょう:
NAK材を効果的に活用するためには、材料特性を理解した上で、適