NAK材と金型加工の特徴や処理方法の解説

NAK材は優れた被削性と高硬度を兼ね備えたプリハードン鋼です。金型製作に最適な特性を持ち、加工時間の短縮やコスト削減に貢献します。あなたの金属加工プロジェクトにNAK材を採用すべき理由とは?

NAK材の特徴と加工方法

NAK材の主な特長
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高硬度と優れた被削性

HRC37~43の硬度を持ちながら、切削加工が容易で精密な金型製作に最適

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熱処理不要

プリハードン鋼のため追加の熱処理が不要で、加工歪みが少なく精度の高い部品製作が可能

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長寿命

耐摩耗性と耐圧性に優れ、金型としての使用寿命が長い

NAK材は大同特殊鋼が開発したプリハードン鋼であり、金型製作において非常に重要な役割を果たしています。この材料は鉄を主成分とし、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)などの合金元素を含んでいます。NAK材の名称は、これらの合金元素の頭文字から取られており、Ni(ニッケル)、Al(アルミニウム)、K(ドイツ語でCuを表すKupfer)の組み合わせです。

 

NAK材の最大の特徴は、時効硬化処理によってHRC37~43程度の均一な硬度を持ちながらも、優れた被削性を備えていることです。通常、このような硬度を持つ材料は加工が難しいものですが、NAK材は比較的容易に切削加工ができるため、精密な金型製作に適しています。

 

NAK材の種類と特性比較

NAK材には主に「NAK55」と「NAK80」の2種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。

 

NAK55は、硫黄(S)を微量に含んでおり、これにより切削性が向上しています。HRC40程度の硬度を持ちながらも、S45Cなどの一般的な鋼材と同等の切削性を示すため、複雑な形状の金型製作に適しています。NAK55は特にプラスチック金型の製作に広く使用されており、その優れた加工性から製造コストの削減と納期短縮に貢献しています。

 

一方、NAK80は1980年に誕生した材料で、NAK55と比較して硫黄を含んでいないことが最大の違いです。このため切削性はNAK55よりもやや劣りますが、鏡面磨き性に優れているという特長があります。NAK80は特に高品質な表面仕上げが求められる金型に適しており、光沢のある製品を製造するための金型材料として高い評価を得ています。

 

以下に両者の特性を比較表で示します:

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特性 NAK55 NAK80
硬度 HRC37~43
切削性 非常に良好 良好
鏡面磨き性 良好 非常に良好
主な用途 プラスチック金型全般 高品質表面仕上げ金型

NAK材はどちらも国内シェアNo.1を誇るプリハードン鋼であり、40HRCレベルのプラスチック金型用鋼として広く認知されています。

 

NAK材の加工におけるポイント

NAK材は高硬度でありながら被削性に優れていますが、最適な加工結果を得るためにはいくつかのポイントに注意する必要があります。

 

  1. 切削速度と送り量の最適化
    • 加工面の精度を向上させるためには、切削速度を上げることが有効です
    • 切り込み量と送り量は加工精度に応じて適切に調整する必要があります
  2. ツールホルダの管理
    • ツールホルダの振れは切削面の精度に大きな影響を与えるため、定期的な点検と必要に応じた交換が重要です
    • 高精度な加工には高剛性のホルダを使用することをお勧めします
  3. 冷却と潤滑
    • NAK材の加工時には適切な冷却と潤滑が重要です
    • 切削油剤を十分に供給し、切削熱による変形を防止することで精度を維持できます
  4. 加工歪みへの対応
    • 長尺部品などでは加工途中で歪みが発生することがあります
    • 加工途中での歪取り工程を適宜実施することで、高い平面度を確保できます

NAK材はHRC40程度の硬度がありながらも、切削性に優れているため加工歪みが少なく、高精度な部品製作が可能です。また、熱処理の必要がないため、熱処理による歪みが発生せず、平面度などの精度向上とリードタイムの短縮によるコストダウンにつながります。

 

NAK材の熱処理と表面処理

NAK材は既にプリハードン処理されているため、基本的には追加の熱処理は不要です。しかし、用途によっては表面硬度を向上させるための処理が行われることがあります。

 

熱処理について
NAK材は時効硬化型の鋼であり、HRC40程度の硬度しか得られません。そのため、通常の焼入れ焼き戻しによって硬度を上げることはできません。より高い硬度が必要な場合は、窒化処理を行うことで表面硬度を向上させることが可能です。

 

窒化処理は鋼の表面に窒素を浸透させて硬化させる方法で、NAK材の表面硬度を大幅に向上させることができます。これにより、耐摩耗性が求められる部分に対して効果的な処理となります。

 

表面処理について
NAK材はアルマイト処理以外のほとんどのめっき処理に対応しています。めっき処理は特別な前処理を必要とせず、通常の鉄材と同様の方法で行うことができます。

 

NAK材は錆びにくい特性も持っており、水にさらされるプラスチック金型にも適しています。これは合金元素の効果によるもので、長期使用における金型のメンテナンス頻度を減らすことができます。

 

NAK材の長所と短所

NAK材を金属加工に採用する際には、その長所と短所を理解しておくことが重要です。

 

長所:

  1. 優れた被削性
    • HRC37~43の硬度を持ちながらも、HRC18程度のS53Cとほぼ同等の切削性を示します
    • 複雑な形状の加工でも高精度な仕上がりが期待できます
  2. 放電加工後の研磨が容易
    • 放電加工後も加工面の硬さが極端に上昇せず、研磨作業が容易です
    • 加工工程の効率化につながります
  3. 優れた鏡面仕上げ性
    • 特にNAK80は鏡面仕上げ性に優れており、ピンホールが出にくく光沢のある表面が得られます
    • 高品質な外観が求められる製品の金型に最適です
  4. 良好な肉盛溶接性
    • 肉盛溶接部の硬さ上昇が少なく、修正や補修が容易です
    • 溶接後に時効処理を施すことで均一なシボ加工面が得られます
  5. 長い型寿命
    • 適度な硬度により耐摩耗性と耐圧性に優れ、長期間の使用に耐えます
    • 金型の交換頻度が減少し、長期的なコスト削減につながります
  6. 錆びにくい特性
    • 水にさらされる環境でも使用可能で、メンテナンス頻度を減らせます

短所:

  1. 焼入れ焼き戻しによる硬度向上が不可能
    • 時効硬化型の鋼材であるため、通常の熱処理では硬度を上げられません
    • 高硬度が必要な用途では窒化処理などの表面処理が必要です
  2. コスト面での課題
    • 一般的な構造用鋼と比較すると材料コストが高くなります
    • ただし、熱処理工程の省略や長寿命によるトータルコストでは優位性があります
  3. 大型部品での入手性
    • 非常に大型の部品では入手が難しい場合があります
    • 特殊サイズの調達には時間がかかることがあります

NAK材の長所と短所を理解し、用途に応じて適切に選択することで、効率的な金属加工と高品質な製品製造が可能になります。

 

NAK材を使用した加工事例と応用

NAK材は様々な金属加工の現場で活用されています。ここでは実際の加工事例を紹介し、その応用範囲について解説します。

 

長尺プレート部品の加工事例
厚み15mm、長さ3000mmのNAK55長尺プレート部品の加工例では、両サイドに合計60か所の穴加工と中央部に幅15mm、深さ7mmの溝加工が施されています。このような長尺部品では加工時に歪みが発生しやすいですが、NAK材の特性と適切な加工技術により、加工途中での歪取り工程を行うことで底面の平面度を50ミクロンまでに仕上げることができました。

 

長尺レール部品の加工事例
厚み12mm、長さ1200mmのNAK55長尺レール部品では、両サイドの段落ち部がレール箇所として重要なポイントとなります。この部品では底面に対しての平行度が20ミクロン以内という高精度を確保しています。NAK55の高い硬度により、耐摩耗性と耐圧性が向上し、レール部品としての寿命が大幅に延びています。

 

NAK材の応用分野
NAK材は以下のような分野で広く応用されています:

  1. プラスチック射出成形金型
    • 最も一般的な用途であり、複雑な形状の金型製作に適しています
    • 特に精密部品や光学部品の金型に多く使用されています
  2. ゴム金型
    • 耐久性と表面品質の良さから、ゴム製品の金型にも適しています
  3. プレス金型
    • 中程度の生産量のプレス金型に使用されます
    • 特に精密なプレス加工に適しています
  4. 産業機械部品
    • 耐摩耗性が求められる機械部品に使用されます
    • 特に摺動部品や精密機構部品に適しています
  5. 治具・工具
    • 精密な治具や特殊工具の製作に使用されます
    • 寸法安定性が高く、長期間の使用に耐えます

NAK材の特性を活かした加工事例は多岐にわたり、特に高精度・高品質が求められる分野での採用が進んでいます。材料選定の際には、加工の難易度や要求される精度、使用環境などを考慮して、NAK55とNAK80を適切に選択することが重要です。

 

NAK材の調達と加工コスト最適化

NAK材を使用した金属加工プロジェクトを成功させるためには、材料の調達方法と加工コストの最適化が重要なポイントとなります。ここでは、NAK材の調達における注意点とコスト最適化のための戦略について解説します。

 

NAK材の調達
NAK材は大同特殊鋼の登録商標であり、正規品を調達することが品質保証の観点から重要です。NAK、NAK80、NAK55は日本における大同特殊鋼株式会社の登録商標であり、中国などの海外でも商標登録されています。模倣品や類似品には注意が必要です。

 

調達の際には以下の点に注意しましょう:

  1. 信頼できる供給元の選定
    • 大同特殊鋼の正規代理店や信頼できる材料商社から調達することをお勧めします
    • 品質証明書の確認を忘れずに行いましょう
  2. 在庫状況と納期の確認
    • 特殊サイズや大型の材料は在庫が限られていることがあります
    • プロジェクトのスケジュールに合わせて早めの発注を心がけましょう
  3. 材料のロットと品質
    • 同一ロットからの調達が望ましい場合は、必要量を一括発注することを検討しましょう
    • 特に大型プロジェクトでは材料の品質均一性が重要です

加工コストの最適化
NAK材は一般的な構造用鋼と比較すると材料コストは高くなりますが、トータルコストでは優位性を持つ場合が多いです。以下の点を考慮してコスト最適化を図りましょう:

  1. 熱処理工程の省略
    • NAK材はプリハードン鋼のため、追加の熱処理が不要です
    • 熱処理工程の省略により、工程数の削減とリードタイムの短縮が可能です
  2. 加工パラメータの最適化
    • NAK材の特性に合わせた切削条件の最適化により、工具寿命の延長と加工時間の短縮が可能です
    • 高速切削技術の活用も効果的です
  3. 工具選定の最適化
    • NAK材に適した工具材質と形状を選定することで、加工効率の向上と工具コストの削減が可能です
    • コーティング工具の活用も検討しましょう
  4. 設計の最適化
    • 加工しやすい設計を心がけることで、加工時間の短縮とコスト削減が可能です
    • 特に複雑な形状では、設計段階からの加工性考慮が重要です
  5. 長寿命によるランニングコスト削減
    • NAK材の耐摩耗性と耐圧性による長寿命は、金型や部品の交換頻度を減少させます
    • 長期的な視点でのコスト評価が重要です

NAK材を効果的に活用するためには、材料特性を理解した上で、適