アルミニウムは延性に富む金属材料であり、切削加工時に構成刃先が発生しやすい特性を持っています。構成刃先とは、切削加工中に被削材の一部が工具刃先に付着し、あたかも新しい刃先が形成されたように振る舞う現象です。
この現象は特に低速切削時に顕著に現れます。アルミニウムを比較的低速度で切削すると、切削部分での物理・化学的変化により、アルミニウムの一部が刃先に溶着します。この付着物は加工硬化によって非常に硬くなり、本来の切削工具に代わって切削作用を行うようになります。
構成刃先の形成プロセスは以下のようになります:
この現象が発生する主な原因は、工具とアルミニウムの間の親和性や、アルミニウムの加工硬化特性、延性などにあります。特に切削点の温度が再結晶温度より低い場合に顕著に現れます。
構成刃先の発生はアルミニウムの切削加工において様々な問題を引き起こします。主な問題点と影響は以下の通りです:
構成刃先が形成されると、その不規則な形状が加工面に転写されるため、表面粗さが悪化します。また、構成刃先は加工中に発生・成長・脱落を繰り返すため、加工面に不規則な凹凸やすじが発生します。これにより、美観を重視する部品や高精度な摺動面を持つ部品の品質が著しく低下します。
構成刃先が大きくなるほど実質的な切り込み量も変化します。構成刃先は常に一定ではなく、成長と脱落を繰り返すため、切削中の寸法が安定せず、結果として寸法精度が低下します。特に精密部品の製造においては致命的な問題となります。
構成刃先は刃先に強く溶着するため、脱落時に刃先の一部も一緒に剥がれ落ちることがあります。これにより刃先にチッピングや欠損が生じ、工具寿命が大幅に短縮されます。特にアルミニウム加工では工具コストの増加につながります。
構成刃先の形成と脱落により、切削抵抗が常に変動します。これにより加工中の振動やびびりが発生しやすくなり、加工精度の低下や工具破損のリスクが高まります。
上記の問題により、不良品の発生率が高まり、工具交換の頻度が増加するため、結果として生産性が低下します。また、安定した加工を実現するために切削条件を控えめに設定せざるを得ないケースも多く、これも生産効率の低下につながります。
これらの問題は、特に高精度・高品質が要求されるアルミニウム部品の製造において深刻な影響を及ぼします。
アルミニウム切削時の構成刃先を防止するためには、切削条件の最適化が非常に重要です。適切な切削条件を設定することで、構成刃先の発生を抑制し、高品質な加工を実現できます。
切削速度の最適化
構成刃先は特定の切削速度範囲で発生しやすい特性があります。アルミニウム切削においては、以下のポイントに注意して切削速度を設定しましょう:
送り量の調整
送り量も構成刃先の発生に影響を与える重要な要素です:
切込み量の設定
切込み量も構成刃先の発生に影響します:
クーラントの適切な使用
切削油剤の選定と使用方法も重要です:
これらの切削条件を総合的に最適化することで、アルミニウム切削時の構成刃先発生を大幅に抑制することができます。
アルミニウム加工における構成刃先の発生を防止するためには、適切な工具の選定が非常に重要です。工具の材質、形状、コーティングなどの要素が構成刃先の発生に大きく影響します。
工具材質の選択
アルミニウム加工に適した工具材質を選ぶことで、構成刃先の発生を抑制できます:
工具形状の最適化
工具の形状も構成刃先の発生に大きく影響します:
コーティングの選択
適切なコーティングを施すことで、構成刃先の発生を大幅に抑制できます:
工具ホルダーと剛性
工具システム全体の剛性も構成刃先の発生に影響します:
適切な工具選定は、アルミニウム加工における構成刃先問題の解決に大きく貢献します。加工条件や生産量、コスト面を総合的に考慮し、最適な工具を選択することが重要です。
アルミニウム合金は種類によって機械的特性や切削性が大きく異なるため、合金種類に応じた構成刃先対策が必要です。ここでは、主要なアルミニウム合金系列ごとの特性と対策を解説します。
1000系(純アルミニウム)
純アルミニウムは非常に軟らかく延性が高いため、構成刃先が発生しやすい特性があります。
2000系(Al-Cu系)
ジュラルミンとして知られる2000系は、航空機部品などに使用される高強度合金です。
5000系(Al-Mg系)
マグネシウムを主成分とする5000系は、耐食性に優れ、船舶や車両部品に使用されます。
6000系(Al-Mg-Si系)
最も一般的に使用される6000系は、押出性と機械加工性に優れています。
7000系(Al-Zn系)
亜鉛を主成分とする7000系は、最高強度を持つアルミニウム合金です。