クーラントと切削油の効果と種類と選び方

切削加工における潤滑・冷却・洗浄に欠かせないクーラントと切削油について詳しく解説します。効果的な使用方法から選び方、トラブル対策まで網羅的に紹介。あなたの工場の生産性を高める最適な切削油とは?

クーラントと切削油の基礎知識と活用法

クーラントと切削油の基本情報
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潤滑・冷却・洗浄の3つの効果

切削油は工具とワークの摩擦を減らし、熱を冷却し、切粉を洗い流す重要な役割を担います

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水溶性と不水溶性の2種類

用途や加工条件によって最適な種類が異なり、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります

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適切な管理と対策が重要

泡立ちや腐敗などのトラブルを防ぎ、効果を最大化するためには日常的な管理が欠かせません

クーラントと切削油の定義と役割の違い

切削加工の現場で頻繁に耳にする「クーラント」と「切削油」という言葉。これらは厳密には異なる概念ですが、現場では同じような意味で使われることが多いです。

 

切削油は主に「潤滑・洗浄」の効果を持ち、クーラントは主に「冷却」の効果を持ちます。特にマシニングセンタなどの高速加工では冷却効果が重視されるため、冷却性能の高い水溶性切削油は「クーラント」とも呼ばれています。現場では「切削油≒クーラント」として扱われることが多く、不水溶性切削油も含めてクーラントと呼ぶケースもあります。

 

切削油(クーラント)は工作機械による加工において、単に潤滑するだけでなく、加工時に発生する熱を冷却し、切粉を洗い流す重要な役割を担っています。これらの効果は高い生産性が求められるNC工作機械の自動加工には欠かせません。

 

クーラントの3つの効果:潤滑・冷却・洗浄

切削油(クーラント)には、主に以下の3つの効果があります。

 

  1. 潤滑効果

    加工ワークと工具の間に切削油が浸透し、摩擦を減らします。これにより:

    • 工具の摩耗が少なくなり、工具寿命が延びる
    • 切削抵抗が減少し、少ない力で加工が可能になる
    • 構成刃先の発生を防ぎ、加工面の精度が向上する
  2. 冷却効果

    切削加工時には600〜1000℃にも達する熱が発生します。特に熱伝導率の低いステンレスなどは熱が逃げにくく高温になりやすいです。クーラントによる冷却効果で:

    • 工具の熱変形が抑制され、工具寿命が延びる
    • ワークや工具の熱変位を防ぎ、加工精度が安定する
    • 高速加工が実現可能になる
  3. 洗浄効果

    切削中に発生する切粉を流し落とし、洗浄(フラッシング)します:

    • 切粉の付着によるワークの傷を防止
    • 切粉の詰まりや堆積による加工不良を防止
    • 絡まった切粉による工具の折損を防止

最新鋭のマシニングセンタでは、切粉の堆積量をカメラで監視し、自動で洗浄を行うシステムも導入されています。

 

切削油の種類と特性:水溶性と不水溶性の比較

切削油は大きく分けて「水溶性切削油」と「不水溶性切削油(油性切削油)」の2種類があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。

 

【水溶性切削油】
水で希釈して使用する加工油で、希釈された状態をクーラントと呼びます。水溶性切削油はさらに以下の3種類に分類されます:

  1. エマルション型(乳化型):鉱油や脂肪油などの油性成分を主成分とし、界面活性剤や水などを加えて安定化させた油剤。希釈液は乳白色を呈します。

     

  2. ソリューション型(半透明型):鉱油や脂肪油などの油性成分を主成分とし、界面活性剤や水などを加えて安定化させた油剤。希釈すると外観が透明または半透明になります。

     

  3. ケミカル型(合成型):水に溶ける成分のみで構成されている油剤。希釈液は透明です。

     

【不水溶性切削油】
水を含まず、そのままの状態で使用する油剤です。

 

水溶性切削油と不水溶性切削油の比較表:

性能項目 水溶性切削油 不水溶性切削油
冷却性能 ◎ 優れている △ やや劣る
潤滑性能 △ やや劣る ◎ 優れている
洗浄性能 ◎ 優れている △ やや劣る
防錆性能 △ やや劣る ○ 良好
引火性 ◎ 引火点なし △ 引火点あり
管理の手間 △ 腐敗するため定期管理必要 ○ 比較的安定
コスト ○ 比較的安価 △ やや高価

クーラントの選び方と加工条件に合わせた最適化

切削油(クーラント)の選択は加工条件や目的によって異なります。以下のポイントを考慮して最適なものを選びましょう。

 

  1. 加工材料の種類
    • 鉄鋼材料:一般的な水溶性切削油で対応可能
    • アルミニウム:アルミ専用または低刺激性の切削油が適している
    • ステンレス・チタン:高い潤滑性と冷却性を持つ切削油が必要
    • 非鉄金属:変色防止効果のある切削油が適している
  2. 加工方法
    • 旋削・フライス加工:冷却性重視の水溶性切削油
    • タッピング・ねじ切り:潤滑性重視の不水溶性切削油または極圧添加剤入りの水溶性切削油
    • 研削加工:洗浄性重視の水溶性切削油
    • 深穴加工:浸透性の高い不水溶性切削油
  3. 加工速度
    • 高速加工:冷却性に優れた水溶性切削油
    • 低速加工:潤滑性に優れた不水溶性切削油
  4. 環境・安全面の考慮
    • 作業環境:ミスト発生の少ない切削油
    • 安全性:引火点の高い切削油
    • 食品機械加工:NSF H1規格などの食品機械用潤滑油
  5. 管理のしやすさ
    • 長期使用:腐敗しにくい添加剤入りの水溶性切削油
    • メンテナンス頻度:管理の手間が少ない不水溶性切削油

最適な切削油を選ぶことで、工具寿命の延長、加工精度の向上、生産性の向上などのメリットが得られます。

 

クーラントの泡立ちトラブルと効果的な対策方法

水溶性切削油(クーラント)を使用する際、泡立ちは頻繁に発生するトラブルの一つです。なぜ泡立ちが問題なのか、その原因と対策について解説します。

 

【泡立ちによる問題点】

  1. 作業環境の悪化
    • 機械周りが汚れ、滑りやすくなる
    • 清掃作業時間の増加
    • 作業者の精神的ストレス
  2. 生産効率の低下
    • 冷却不足による加工性の低下
    • 製品不良の発生
    • 予期しない機械停止
    • 加工点の視認性低下
  3. コスト増加
    • 切削油の消費量増加
    • 消泡剤などの追加コスト
    • トラブル対応の人件費

【泡立ちの主な原因と対策】

原因 対策
切削油の濃度が高すぎる 適正濃度に調整する(濃度計で定期的に測定)
泡立ちやすい切削油の使用 消泡性の高い切削油に変更する
切削油の劣化による消泡性能の低下 定期的な全液交換を行う
タンク内の水量不足 適正水量を維持し、毎日補給する
フィルターの目詰まり 定期的なフィルター清掃を行う
高圧クーラント使用による泡立ち 必要最小限の圧力に調整する
切削油の落下高さが高い ノズル位置や向きを調整する
摺動面油の混入 専用の消泡剤を添加する

【急な泡立ち発生時の対処法】

  1. 濃度を確認し、高い場合は薄い切削油を補給
  2. タンク内の水量を適正に調整
  3. フィルターを清掃
  4. 専用の消泡剤を適量添加

これらの対策を行っても改善しない場合は、切削油メーカーに相談することをおすすめします。

 

クーラントの腐敗防止と食品機械向け切削油の特徴

水溶性切削油は時間の経過とともに腐敗するリスクがあります。また、食品機械向けには特別な規格の切削油が必要です。これらの特殊な状況について解説します。

 

【水溶性切削油の腐敗とその防止策】
水溶性切削油は水を含むため、微生物が繁殖しやすく腐敗のリスクがあります。腐敗すると以下の問題が発生します:

  • 悪臭の発生
  • 油剤性能の低下
  • 皮膚トラブルのリスク増加
  • 防錆性能の低下

腐敗を防止するための対策:

  1. 定期的な液管理
    • pH値の測定(通常は8.5〜9.5が適正)
    • 濃度の測定と調整
    • 外観・臭いの確認
  2. 防腐剤の添加
    • 専用の防腐剤を定期的に添加
    • メーカー推奨の添加量を守る
  3. 定期的な全液交換
    • 使用状況にもよりますが、3〜6ヶ月ごとの全液交換が目安
    • 交換時にはタンクの清掃も実施
  4. 異物混入の防止
    • タバコ、食べ物、飲料などの混入防止
    • 摺動面油の混入を最小限に抑える

【食品機械向け切削油の特徴とNSFガイドライン】
食品製造機械の加工や保守に使用される切削油・潤滑油には、特別な安全基準が設けられています。NSF(米国衛生財団)によるガイドラインでは以下のように分類されています:

  • H1規格:食品に接触するべきではないが、偶発的に混入しても安全なもの
  • H2規格:食品に絶対に接触してはならないもの(食品工場内の食品が置かれていない場所での使用は可能)
  • H3規格:肉を吊るすフックの錆防止等に使用されるもの(大豆油等の食べても問題ないもの)
  • 3H規格:グリルやフライパン等の焦げ付き防止に使用される植物油等、直接食品に接触する目的で使用されるもの

食品機械向け切削油の特徴:

  • 無毒性・無害性
  • 無臭・無味
  • 高い洗浄性
  • 優れた防錆性
  • 生分解性が高い

食品工場で切削油を使用する際は、これらの規格に適合した製品を選択することが重要です。

 

以上のように、切削油(クーラント)は単なる潤滑剤ではなく、加工品質や生産効率に大きく影響する重要な要素です。適切な種類の選択と日常的な管理を行うことで、工具寿命の延長、加工精度の向上、コスト削減などの効果が期待できます。

 

切削加工の現場では、これらの知識を活かして最適な切削油の選択と管理を行い、生産性の向上と品質の安定化を図りましょう。

 

食品機械用潤滑油のNSFガイドラインについての詳細情報
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