切削加工の現場で頻繁に耳にする「クーラント」と「切削油」という言葉。これらは厳密には異なる概念ですが、現場では同じような意味で使われることが多いです。
切削油は主に「潤滑・洗浄」の効果を持ち、クーラントは主に「冷却」の効果を持ちます。特にマシニングセンタなどの高速加工では冷却効果が重視されるため、冷却性能の高い水溶性切削油は「クーラント」とも呼ばれています。現場では「切削油≒クーラント」として扱われることが多く、不水溶性切削油も含めてクーラントと呼ぶケースもあります。
切削油(クーラント)は工作機械による加工において、単に潤滑するだけでなく、加工時に発生する熱を冷却し、切粉を洗い流す重要な役割を担っています。これらの効果は高い生産性が求められるNC工作機械の自動加工には欠かせません。
切削油(クーラント)には、主に以下の3つの効果があります。
加工ワークと工具の間に切削油が浸透し、摩擦を減らします。これにより:
切削加工時には600〜1000℃にも達する熱が発生します。特に熱伝導率の低いステンレスなどは熱が逃げにくく高温になりやすいです。クーラントによる冷却効果で:
切削中に発生する切粉を流し落とし、洗浄(フラッシング)します:
最新鋭のマシニングセンタでは、切粉の堆積量をカメラで監視し、自動で洗浄を行うシステムも導入されています。
切削油は大きく分けて「水溶性切削油」と「不水溶性切削油(油性切削油)」の2種類があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。
【水溶性切削油】
水で希釈して使用する加工油で、希釈された状態をクーラントと呼びます。水溶性切削油はさらに以下の3種類に分類されます:
【不水溶性切削油】
水を含まず、そのままの状態で使用する油剤です。
水溶性切削油と不水溶性切削油の比較表:
性能項目 | 水溶性切削油 | 不水溶性切削油 |
---|---|---|
冷却性能 | ◎ 優れている | △ やや劣る |
潤滑性能 | △ やや劣る | ◎ 優れている |
洗浄性能 | ◎ 優れている | △ やや劣る |
防錆性能 | △ やや劣る | ○ 良好 |
引火性 | ◎ 引火点なし | △ 引火点あり |
管理の手間 | △ 腐敗するため定期管理必要 | ○ 比較的安定 |
コスト | ○ 比較的安価 | △ やや高価 |
切削油(クーラント)の選択は加工条件や目的によって異なります。以下のポイントを考慮して最適なものを選びましょう。
最適な切削油を選ぶことで、工具寿命の延長、加工精度の向上、生産性の向上などのメリットが得られます。
水溶性切削油(クーラント)を使用する際、泡立ちは頻繁に発生するトラブルの一つです。なぜ泡立ちが問題なのか、その原因と対策について解説します。
【泡立ちによる問題点】
【泡立ちの主な原因と対策】
原因 | 対策 |
---|---|
切削油の濃度が高すぎる | 適正濃度に調整する(濃度計で定期的に測定) |
泡立ちやすい切削油の使用 | 消泡性の高い切削油に変更する |
切削油の劣化による消泡性能の低下 | 定期的な全液交換を行う |
タンク内の水量不足 | 適正水量を維持し、毎日補給する |
フィルターの目詰まり | 定期的なフィルター清掃を行う |
高圧クーラント使用による泡立ち | 必要最小限の圧力に調整する |
切削油の落下高さが高い | ノズル位置や向きを調整する |
摺動面油の混入 | 専用の消泡剤を添加する |
【急な泡立ち発生時の対処法】
これらの対策を行っても改善しない場合は、切削油メーカーに相談することをおすすめします。
水溶性切削油は時間の経過とともに腐敗するリスクがあります。また、食品機械向けには特別な規格の切削油が必要です。これらの特殊な状況について解説します。
【水溶性切削油の腐敗とその防止策】
水溶性切削油は水を含むため、微生物が繁殖しやすく腐敗のリスクがあります。腐敗すると以下の問題が発生します:
腐敗を防止するための対策:
【食品機械向け切削油の特徴とNSFガイドライン】
食品製造機械の加工や保守に使用される切削油・潤滑油には、特別な安全基準が設けられています。NSF(米国衛生財団)によるガイドラインでは以下のように分類されています:
食品機械向け切削油の特徴:
食品工場で切削油を使用する際は、これらの規格に適合した製品を選択することが重要です。
以上のように、切削油(クーラント)は単なる潤滑剤ではなく、加工品質や生産効率に大きく影響する重要な要素です。適切な種類の選択と日常的な管理を行うことで、工具寿命の延長、加工精度の向上、コスト削減などの効果が期待できます。
切削加工の現場では、これらの知識を活かして最適な切削油の選択と管理を行い、生産性の向上と品質の安定化を図りましょう。