切削加工 ステンレス の特徴と加工方法

ステンレスの切削加工について、その特性や加工時の注意点、適切な工具選びなどを詳しく解説します。高品質な加工を実現するためのポイントとは?

切削加工 ステンレス の基礎知識と技術

ステンレス切削加工の重要ポイント
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適切な工具選択

耐摩耗性に優れたコーティング処理済みの超硬合金製切削工具を使用

🌡️
熱対策

切削油(クーラント)を使用し、工具と材料の温度上昇を抑制

⚙️
適切な加工条件設定

切削速度、切り込み量、送り量を適切に調整し、加工品質を向上

切削加工 ステンレス の特性と課題

ステンレスは耐食性や耐熱性に優れた金属材料ですが、その特性ゆえに切削加工には独特の課題があります。主な特性と課題は以下の通りです:

  1. 低熱伝導率:
    • 切削時に発生する熱が逃げにくい
    • 工具の摩耗が早く、寿命が短くなる
  2. 高い延性:
    • 切りくずが長くなりやすい
    • 切削抵抗が大きくなる
  3. 加工硬化:
    • 切削中に材料が硬化し、加工が困難になる
    • 表面粗さの悪化や寸法精度の低下を引き起こす
  4. 耐食性:
    • 切削油の選択に注意が必要
    • 不適切な切削油使用で耐食性が低下する可能性がある

これらの特性を理解し、適切な対策を講じることが高品質なステンレス切削加工の鍵となります。

 

切削加工 ステンレス に適した工具選び

ステンレスの切削加工には、適切な工具の選択が非常に重要です。以下に、ステンレス加工に適した工具の特徴と選び方を紹介します:

  1. 材質:
    • 超硬合金:耐摩耗性に優れ、高速切削が可能
    • セラミック:高温での硬度維持に優れるが、靭性に欠ける
    • CBN(立方晶窒化ホウ素):高硬度で耐熱性に優れるが、コストが高い
  2. コーティング:
    • TiAlN(チタンアルミニウム窒化物):耐熱性、耐摩耗性に優れる
    • TiCN(チタン炭窒化物):靭性と耐摩耗性のバランスが良い
    • AlCrN(アルミクロム窒化物):高温での安定性に優れる
  3. 形状:
    • 正のすくい角:切れ味が良く、切削抵抗を低減
    • シャープなエッジ:切りくず排出性を向上
    • チップブレーカー:長く連続した切りくずの生成を防ぐ
  4. サイズ:
    • 大きめのバイト:熱容量が大きく、熱による影響を軽減
    • 多刃フライス:1枚あたりの負荷を分散

工具メーカーのカタログやウェブサイトを参考に、加工するステンレスの種類や加工条件に適した工具を選択することが重要です。

 

ステンレス鋼の穴あけに関する詳細な技術情報(三菱マテリアル)

切削加工 ステンレス の最適な加工条件設定

ステンレスの切削加工では、適切な加工条件の設定が重要です。以下に、主要な加工パラメータとその設定指針を示します:

  1. 切削速度:
    • 一般的に低めに設定(炭素鋼の50-70%程度)
    • オーステナイト系:30-100 m/min
    • フェライト系・マルテンサイト系:50-150 m/min
  2. 送り量:
    • 小さめに設定し、切りくず厚さを薄くする
    • 旋削:0.1-0.3 mm/rev
    • フライス加工:0.05-0.2 mm/tooth
  3. 切り込み深さ:
    • 材料の硬さや工具の剛性に応じて設定
    • 荒加工:1-5 mm
    • 仕上げ加工:0.2-1 mm
  4. 工具の突き出し量:
    • できるだけ短く設定し、びびり振動を抑制
  5. 切削油(クーラント):
    • 水溶性切削油を推奨(冷却性に優れる)
    • 高圧クーラントの使用で切りくず排出性向上

これらのパラメータは相互に影響し合うため、最適な組み合わせを見つけることが重要です。また、加工する材料の特性や形状、使用する工作機械の性能なども考慮して調整する必要があります。

 

切削加工 ステンレス の種類別加工ポイント

ステンレスには様々な種類があり、それぞれ特性が異なるため、加工方法にも違いがあります。主要なステンレスの種類と、その加工ポイントを以下に示します:

  1. オーステナイト系(SUS304, SUS316など):
    • 特徴:非磁性、高延性、加工硬化しやすい
    • 加工ポイント:
      • 低速・高送りでの切削を推奨
      • 切り込みを深くし、工具の逃げ面摩耗を抑制
      • 切れ刃の鋭利な工具を使用
    • フェライト系(SUS430など):
      • 特徴:磁性あり、延性が低い、加工しやすい
      • 加工ポイント:
        • 比較的高速での切削が可能
        • 切りくずが短く、排出性が良好
        • 正のすくい角を持つ工具を使用
      • マルテンサイト系(SUS420など):
        • 特徴:高硬度、耐摩耗性が高い
        • 加工ポイント:
          • 低速での切削を推奨
          • 高剛性の工具を使用
          • 切削油の使用で熱影響を軽減
        • 二相ステンレス(SUS329J3Lなど):
          • 特徴:高強度、耐食性に優れる
          • 加工ポイント:
            • オーステナイト系よりも高速での切削が可能
            • 切りくずコントロールに注意
            • コーティングされた超硬工具の使用を推奨
          • 析出硬化系(SUS630など):
            • 特徴:高強度、熱処理により硬度調整可能
            • 加工ポイント:
              • 熱処理状態に応じて加工条件を調整
              • 高剛性の工具ホルダーを使用
              • 切削油の十分な供給で熱影響を抑制

各種ステンレスの加工には、その特性を理解し、適切な工具と加工条件を選択することが重要です。また、加工中の材料の状態変化にも注意を払い、必要に応じて条件を調整することが高品質な加工につながります。

 

ステンレス鋼の種類と特性に関する詳細情報(JFEスチール)

切削加工 ステンレス の表面品質向上テクニック

ステンレスの切削加工において、高い表面品質を得ることは製品の機能性や美観に直結する重要な課題です。以下に、表面品質を向上させるためのテクニックを紹介します:

  1. 工具選択:
    • 鋭利な切れ刃を持つ工具を使用
    • PVDコーティングされた超硬工具を選択(TiAlNなど)
    • 微粒子超硬合金を使用し、エッジの品質を向上
  2. 切削条件の最適化:
    • 高速・低送りの条件で仕上げ加工を実施
    • 切り込み量を小さくし、表面粗さを改善
    • びびり振動を抑制するため、工具の突き出し量を最小限に
  3. クーラント管理:
    • 清浄な切削油を使用し、不純物による表面傷を防止
    • 高圧クーラントを使用し、切りくずの再切削を防ぐ
    • オイルミスト給油で微細な表面仕上げを実現
  4. 工具経路の最適化:
    • 等高線加工やスパイラル加工など、連続的な工具経路を採用
    • 工具進入・退出時の動きを滑らかにし、マークを防止
  5. 後加工処理:
    • 電解研磨で表面の微細な凹凸を除去
    • バレル研磨で均一な表面仕上げを実現
    • パッシベーション処理で耐食性を向上
  6. 加工環境の管理:
    • 防振性の高い工具ホルダーを使用
    • 機械の剛性を確保し、びびり振動を抑制
    • 加工室の温度管理で熱変位を最小化

これらのテクニックを組み合わせることで、ステンレスの持つ美しい光沢と高い耐食性を最大限に引き出すことができます。また、加工目的や要求される表面品質に応じて、適切な手法を選択することが重要です。

 

切削加工技術に関する詳細情報(不二越)
以上の情報を参考に、ステンレスの切削加工技術を向上させ、高品質な製品製造につなげていただければ幸いです。ステンレスの特性を理解し、適切な工具と加工条件を選択することで、効率的かつ高精度な加工が可能となります。常に最新の技術動向にも注目し、継続的な改善を心がけることが、競争力のある製品づくりの鍵となるでしょう。