鋳物切削加工の難しさと工程や技術の特徴

鋳物切削加工は年々対応企業が減少している特殊な金属加工技術です。本記事では加工の難しさや工程、最新技術、対応企業の選び方までを解説します。あなたの会社に最適な鋳物切削加工のパートナーはどこにあるでしょうか?

鋳物切削加工の工程と難しさや技術のポイント

鋳物切削加工の基本情報
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定義

鋳造で成形された金属部品(鋳物)を、所定の形状や寸法に仕上げるために切削加工を施す工程

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主な工程

粗加工→中仕上げ加工→仕上げ加工の3段階で精度を高めていく

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難易度

切粉の問題、品質のばらつき、鋳造不良リスク、治具製作の手間などから年々対応企業が減少

鋳物切削加工の主な工程と各段階の特徴

鋳物切削加工は、鋳造によって形成された金属部品を精密な寸法や形状に仕上げるための重要な二次加工プロセスです。この加工は一般的に3つの主要工程に分けられます。

 

まず最初の工程は「粗加工」です。この段階では、エンドミルなどの工具を用いて鋳物の大まかな形状を整えます。不要な部分を削り取り、基本的な形状を形成しますが、この時点では表面は荒く、高い精度は求められません。粗加工では、後工程のための余裕を持たせた寸法で加工を行います。

 

次に「中仕上げ加工」へと進みます。粗加工で形成された形状をさらに整え、精度を向上させるための重要な工程です。この段階では、温度変化による寸法変化や切削痕を整えることが重要となります。より高い精度が求められますが、まだ最終的な仕上げには至りません。

 

最後に「仕上げ加工」を行います。この工程では、最終的な寸法精度を0〜0.01mmという非常に狭い範囲内に調整します。専用機を使用して図面指示通りの寸法に近づけ、完了後には品質検査が実施されます。

 

これらの工程を経ることで、高い精度を持つ鋳物製品が完成します。特に鋳鉄や鋳鋼の場合は、切粉が細かく機械に悪影響を及ぼす可能性があるため、各工程において慎重な作業が求められます。

 

鋳物切削加工が難しい理由と技術的課題

鋳物の切削加工は年々対応できる企業が減少しています。その背景には複数の技術的課題があります。

 

第一に、鋳物加工時に発生する切粉の問題があります。鋳物、特に鋳鉄の加工では非常に細かい切粉が発生し、これが工作機械の隙間に入り込むことで目詰まりや摩耗の原因となります。その結果、工作機械の寿命が大幅に短縮されてしまうのです。また、切粉の吸引が不十分だと作業者の健康被害にもつながる可能性があります。このため、作業環境の確保自体が難しくなっています。

 

第二に、支給材料ごとの品質のばらつきがあります。鋳物加工は二次加工であるため、鋳造業者ごとに品質差があり、同じ会社の製品でもロットによって品質にばらつきが生じます。このような不均一な素材を扱うには、高い技術力と品質を整えるための専門知識が必要です。

 

第三に、鋳造不良による加工ロスの問題があります。加工途中で鋳巣や割れなどの鋳造不良が発見されると、それまでの加工工程がすべて無駄になってしまいます。加工の難しさに加え、このような歩留まりの低下が発生するリスクがあるため、鋳物切削加工を引き受ける企業は減少傾向にあります。

 

第四に、治具製作に関する課題があります。鋳物加工では多くの場合、専用の治具製作が必要となります。小ロットの加工でも専用治具を作る必要があるため、工数が増加し、作業時間も長くなりがちです。これが他の加工方法と比較して鋳物切削加工が難しいとされる理由の一つです。

 

鋳物切削加工における工具選定と加工のポイント

鋳物切削加工を成功させるためには、適切な工具選定と加工技術が不可欠です。まず重要なのは、鋳物の特性を十分に理解することです。

 

鋳物の種類によって切削特性は大きく異なります。例えば、片状の黒鉛組織が散在するねずみ鋳鉄は、切りくずが小さく分断しやすい特徴があります。一方、球形状の黒鉛を含むダクタイル鋳鉄では、切りくずが分断されにくい性質があります。このような素材ごとの特性は工具選定に直接影響するため、切削前に確認することが重要です。

 

工具選定においては、加工目的に応じた最適な工具を選ぶ必要があります。例えば、ねじ山を開ける場合はタップを、平面や溝、スリットなどを加工する場合はフライスを選択するなど、工具ごとの特徴を理解して適切に選定することが求められます。

 

切削条件の設定も重要なポイントです。鋳物は硬度のばらつきがあるため、切削速度や送り速度、切込み量などの条件を適切に設定する必要があります。特に初めて加工する鋳物の場合は、安全側の条件から始めて徐々に最適化していくアプローチが推奨されます。

 

また、切削油剤の選択も成功の鍵を握ります。鋳物加工では切削熱が発生しやすく、工具の摩耗を早める原因となります。適切な切削油剤を使用することで、切削熱の発生を抑制し、工具寿命を延ばすことができます。

 

さらに、加工順序の最適化も重要です。鋳物は内部応力を持っていることが多いため、加工順序によっては変形が生じる可能性があります。このため、バランスの取れた加工順序を計画することで、精度の高い加工結果を得ることができます。

 

鋳物切削加工の最新技術とデジタルトランスフォーメーション

鋳物切削加工の分野では、近年さまざまな技術革新が進んでいます。特に注目すべきは、ロボット技術とデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用です。

 

最新の事例として、オークマと木村鋳造所の共同開発が挙げられます。彼らは次世代鋳造技術を開発し、砂型の直接切削加工をロボットで行うシステムを導入しました。このシステムは上型と下型の精密な型合わせや中子の挿入まですべて自動で行い、省人化やリードタイムの短縮に大きく貢献しています。さらに、エアブローによる加工後の砂除去機能も備えており、切削工具の摩耗を抑制する工夫も施されています。

 

また、三和軽合金製作所はアルミ鋳造の生産性向上を目指し、高速動作と最適制御を実現する新しい加工機を導入しました。この機械は5面高速加工が可能で、高能率加工から重切削加工まで幅広い切削力を提供します。これにより、従来よりも効率的かつ高精度な加工が実現しています。

 

デジタルトランスフォーメーション(DX)の活用も進んでいます。例えばオークマでは、部品を3Dデータとして設計し、そのデータを各工程で一貫して活用することで製造工程全体の効率化を図っています。これにより、砂型設計の手間が大幅に軽減され、動作経路も自動生成されるため、効率的な生産が可能となっています。

 

さらに、IoTやAI技術の導入も進んでいます。センサーを活用して切削状態をリアルタイムでモニタリングし、異常を早期に検知するシステムや、過去の加工データを分析して最適な切削条件を自動的に導き出すAIシステムなども開発されています。これらの技術により、熟練工の経験や勘に頼っていた部分を科学的なアプローチで補完することが可能になりつつあります。

 

このような技術革新により、鋳物切削加工はより高精度かつ効率的になりつつあります。今後もさらなる技術発展が期待される分野です。

 

オークマと木村鋳造所の共同開発に関する詳細情報

鋳物切削加工の材質別特性と対応企業の選び方

鋳物切削加工を依頼する際には、材質の特性を理解し、それに適した対応ができる企業を選ぶことが重要です。主な鋳物材質とその特性、そして適切な企業選びのポイントを解説します。

 

まず、代表的な鋳物材質として「ねずみ鋳鉄」があります。これは鉄を主成分に2.1~6.7%という多量の炭素を含む合金で、炭素が黒鉛の形で結晶化しています。破面がねずみ色に見えることからこの名前がついています。FCの後に続く三桁の数字は引っ張り強度を表しており、FC150、FC200、FC250、FC300、FC350などがあります。切削性は比較的良好ですが、硬度のばらつきに注意が必要です。

 

次に「ダクタイル鋳鉄」があります。これはマグネシウムやセリウムなどを添加することで、組織中の黒鉛の形状を球状にしたもので、球状黒鉛鋳鉄(FCD)とも呼ばれます。ねずみ鋳鉄の数倍の強度を持ち、機械的強度や耐摩耗性、耐熱性に優れています。FCD350、FCD400、FCD450などの種類があり、FCDの後の数字も引っ張り強度を表しています。切削性はねずみ鋳鉄よりもやや劣りますが、高い強度が求められる部品に適しています。

 

その他、「アルミ合金鋳物」のAC4Cや、「青銅鋳物」のCAC403(BC3)、CAC406(BC6)、「リン青銅鋳物」のCAC502A(PBC2)、「鉛青銅鋳物」のCAC603(LBC3)、「アルミニウム青銅鋳物」のCAC702(ALBC2)、CAC703(ALBC3)などがあります。これらはそれぞれ特有の性質を持ち、用途に応じて選択されます。

 

鋳物切削加工を依頼する企業を選ぶ際のポイントとしては、以下の点に注目すると良いでしょう。

 

  1. 技術力と経験: 長年の経験を持ち、多様な鋳物材質に対応できる技術力を持った企業を選びましょう。特に難しいとされる鋳物加工に積極的に取り組んでいる企業は貴重です。

     

  2. 設備の充実度: 多様な加工に対応できる設備を持っているかどうかも重要です。特に、鋳物加工に適した工作機械や測定機器を保有しているかを確認しましょう。

     

  3. 品質管理体制: 鋳物は品質のばらつきが大きいため、それを見極め、安定した品質の製品を提供できる体制が整っているかどうかが重要です。

     

  4. 対応可能なロット数: 小ロットから対応可能かどうかも確認しましょう。鋳物加工は専用治具が必要なことが多いため、小ロットでも柔軟に対応してくれる企業が理想的です。

     

  5. コミュニケーション: 技術的な相談に丁寧に応じてくれるか、問題が発生した際に迅速に対応してくれるかなど、コミュニケーション面も重要なポイントです。

     

具体的な企業例としては、株式会社タダシ製作所や株式会社ヨツ葉などが挙げられます。タダシ製作所は技術・品質・スピード・サービス・設備が揃っており、製造から販売、アフターサポートまでワンストップで対応しています。ヨツ葉は創業70年以上の実績を持ち、小ロット生産や他社で断られたような鋳物加工も引き受けることがあります。

 

このように、材質の特性を理解し、適切な企業を選ぶことで、高品質な鋳物切削加工を実現することができます。

 

鋳物切削加工の産業応用と将来展望

鋳物切削加工は多様な産業分野で重要な役割を果たしており、その応用範囲は今後さらに拡大していくことが予想されます。現在の主要な応用分野と将来展望について考察します。

 

自動車産業では、エンジンブロック、シリンダーヘッド、ブレーキディスク、マニホールドなど多くの重要部品に鋳物が使用されています。特に電気自動車(EV)の普及に伴い、軽量化と高強度の両立が求められる部品において、アルミ合金鋳物の需要が増加しています。また、複雑な形状の部品を一体成形できる鋳物の特性は、部品点数の削減にも貢献しています。

 

工作機械や産業機械の分野では、剛性が求められるベッドやコラムなどの構造部品に鋳鉄鋳物が広く使用されています。これらの部品は高い寸法精度と表面品質が要求されるため、鋳物切削加工の技術が不可欠です。特に近年は、より高精度な加工を実現するために、鋳物の内部応力を考慮した切削技術の開発が進んでいます。

 

建設・土木機械分野では、油圧シリンダーやポンプハウジング、各種ブラケットなどに鋳物が使用されています。これらの部品は過酷な環境で使用されるため、耐久性と信頼性が重視されます。鋳物切削加工によって精密な嵌合面や油密面を形成することで、高い性能を発揮しています。

 

エネルギー産業、特に風力発電や水力発電の分野では、タービンハウジングやブレード取付部などの大型鋳物部品が使用されています。