エンドミルを使った穴あけ加工を行う際には、適切な工具選定が成功の鍵となります。エンドミルには様々な種類があり、それぞれ特性が異なるため、加工目的に合わせて選ぶことが重要です。
まず、穴あけに使用するエンドミルは「センターカット」と呼ばれる中心に切れ刃があるタイプを選ぶ必要があります。センターカットがないエンドミルでは、縦方向への切り込みができないため穴あけ加工には適しません。
エンドミルの主な種類と特徴は以下の通りです:
刃数についても選択肢があります:
材質面では、一般的な鋼材加工にはハイスピードスチール(HSS)、硬い材料や高速加工にはコバルト含有HSS(Co-HSS)や超硬合金が適しています。さらに、TiNコーティングやAlCr系コーティングなどの表面処理を施すことで、耐摩耗性や耐熱性を向上させることができます。
エンドミルでの穴あけ加工には、いくつかの方法があります。それぞれの特徴と手順を詳しく見ていきましょう。
1. 下穴を利用する方法
最も一般的なのは、まずドリルで下穴を開けてからエンドミルで拡大する方法です。例えば、φ10mmの穴を開けたい場合、まずφ3〜4mm程度(目標径の約1/3)の下穴をドリルで開けます。これにより、エンドミルへの負荷を分散させ、工具寿命を延ばすことができます。
手順:
2. 穴のくり広げ
既存の穴をエンドミルで拡大する方法です。エンドミルがすっぽりと入る大きさの穴をあらかじめドリルで開けておき、そこからエンドミルで側面を削って必要な径に調整します。
手順:
3. ヘリカル加工
最も効率的かつ安全な方法として注目されているのがヘリカル加工です。エンドミルを螺旋状に動かしながら徐々に深さを増していく方法で、工具への負荷を分散させることができます。
手順:
この方法は工具寿命を延ばし、加工精度も向上させることができますが、NCプログラムの作成が必要になります。
4. 直接穴あけ(突っ込み加工)
センタレスエンドミルを使用して、ドリルのように直接穴を開ける方法もあります。ただし、エンドミルは基本的に側面加工用の工具であるため、この方法は非効率的で工具寿命も短くなります。どうしても必要な場合のみ使用しましょう。
手順:
エンドミルで穴あけ加工を行う際は、適切な切削条件の設定が非常に重要です。不適切な条件設定は工具の早期摩耗や破損、加工精度の低下を招きます。
切削条件の基本設定
エンドミルの刃径によって推奨される切削条件が異なります:
刃径3mm以上の場合:
刃径3mm未満の場合:
例えば、刃径6mmのエンドミルで溝切削条件が回転数8,000min⁻¹、送り速度1,000mm/minの場合、穴あけ加工では回転数6,400min⁻¹、送り速度400mm/minに設定します。
注意点
穴あけ加工を行う際、エンドミルとドリルのどちらを選ぶべきか迷うことがあります。それぞれの特徴を理解し、適切に使い分けることが効率的な加工のポイントです。
ドリル加工の特徴
エンドミル穴あけの特徴
使い分けのポイント
以下のような場合はエンドミルでの穴あけが適しています:
一方、以下のような場合はドリル加工が適しています:
実際の現場では、ドリルで下穴を開けてからエンドミルで仕上げるという組み合わせ方法が最も一般的に用いられています。これにより、ドリルの効率性とエンドミルの精度を両立させることができます。
金属加工の現場では、加工効率の向上とコスト削減が常に求められます。エンドミルでの穴あけ加工においても、いくつかの工夫によって大幅な効率化が可能です。
工具本数の最小化
多くの加工工程で様々なサイズのエンドミルを使用すると、工具交換時間や工具管理コストが増大します。可能な限り工具本数を減らす工夫として、以下のような方法があります:
例えば、φ8、φ10、φ12のエンドミルを使う予定の工程があれば、φ8一本で全工程を加工することで、工具準備コストを削減できます。ただし、工具寿命や加工時間のバランスを考慮する必要があります。
ヘリカル加工の活用
ヘリカル加工は、エンドミルでの穴あけにおいて最も効率的な方法の一つです。この方法のメリットは:
ヘリカル加工のプログラミングは複雑に思えますが、最近のCAM(Computer Aided Manufacturing)ソフトウェアでは簡単に生成できるようになっています。
適切な加工パラメータの最適化
加工条件の最適化は効率化の基本です:
特に注目すべきは「高速・高送り加工」の技術です。従来の常識よりも高い切削速度と送り速度を組み合わせることで、加工時間を大幅に短縮できる場合があります。ただし、適切な工具選定と機械剛性が前提となります。
チップ式工具の活用
荒加工には、チップ式のエンドミルやラジアスミル、コロミルなどを使用することで、経済性を高めることができます。チップ交換式工具は:
特に大量生産や硬質材料の加工では、チップ式工具の経済的メリットが大きくなります。
加工シミュレーションの活用
最新のCAMソフトウェアでは、加工前にシミュレーションを行うことができます。これにより:
シミュレーションを活用することで、実際の加工における試行錯誤を減らし、効率的な生産を実現できます。
これらのテクニックを組み合わせることで、エンドミルでの穴あけ加工における効率とコストパフォーマンスを大幅に向上させることができます。ただし、加工環境や要求精度によって最適な方法は異なるため、実際の加工条件に合わせた調整が必要です。