旋盤加工によるネジ製作は、金属加工の中でも基本的かつ重要な技術です。旋盤でのネジ切り加工は、回転するワークに対してネジ切りバイトと呼ばれる工具を当て、らせん状の溝を形成することで行われます。
旋盤でのネジ切り加工の仕組みは、主軸の回転と往復台の移動を同期させることで成り立っています。この同期は「親ねじ」と「ハーフナット」という部品によって実現されます。親ねじは往復台の下部にある長いねじ状の部品で、主軸と歯車で連結されています。主軸が回転すると親ねじも回転し、ハーフナットが親ねじと噛み合うことで往復台が一定の速度で移動します。
この仕組みにより、ワークが1回転する間に往復台が一定距離だけ移動し、らせん状の溝が形成されるのです。ネジのピッチ(山の間隔)は、主軸と親ねじの回転比によって決まります。この回転比は、交換歯車を用いて調整します。
旋盤でのネジ切り加工は、NC旋盤の登場によって大きく進化しました。NC旋盤では、G92やG76といったネジ加工サイクルを使用することで、より精密で効率的なネジ加工が可能になっています。
ネジには「おねじ(雄ねじ)」と「めねじ(雌ねじ)」の2種類があり、それぞれ特徴と加工方法が異なります。
おねじは、円筒や円錐の外面にらせん状の突起があるネジで、一般的にはボルトがこれに該当します。おねじの加工は、外径を削りながら行うため、加工中の様子を目視で確認しやすく、比較的難易度は低いとされています。
一方、めねじは円筒や円錐の内面にらせん状の突起があるネジで、ナットがこれに該当します。めねじの加工は内部で行われるため加工中の様子を目視で確認できず、切粉の排出も難しいことから、おねじに比べて難易度が高い加工となります。
JISではおねじとめねじを以下のように定義しています:
ネジの接続は、おねじとめねじの組み合わせによって行われ、おねじ同士やめねじ同士での接続はできません。ボルトとナットの関係で言えば、ボルトがおねじ、ナットがめねじとなります。
加工上の重要な注意点として、おねじは呼び径(例:M10ならφ10mm)に外径を仕上げてからネジ加工を行いますが、めねじは「ネジ下径」と呼ばれる径に内径を仕上げてからネジ加工を行う必要があります。例えば、M30×P1.5のめねじを加工する場合、内径はφ28.37mmに仕上げる必要があります。誤って内径を呼び径のφ30mmに仕上げてしまうと、ネジ山ができなくなってしまいます。
旋盤加工によるネジの切削加工には、様々な種類と方法があります。それぞれの特徴を理解し、加工目的や材質に合わせて最適な方法を選択することが重要です。
旋盤に取り付けたねじ切りバイトを使用して、回転するワークに対して溝を切り込む方法です。外径ねじの場合はおねじ切りバイト、内径ねじの場合はめねじ切りバイトを使用します。旋削加工の特徴は、様々なピッチやサイズのネジに対応できる柔軟性にあります。バイトの形状や切り込み角度を調整することで、メートルねじ、インチねじ、台形ねじなど多様なネジ形状に対応できます。
めねじ加工で最も一般的な方法で、下穴を開けた後にタップと呼ばれる工具を回転させながら挿入し、めねじを形成します。タップには以下のような種類があります:
通常のタップとは異なり、材料を切削するのではなく塑性変形させてめねじを形成する方法です。切粉が出ないため、切粉による問題が発生しにくいというメリットがあります。また、転造加工は材料の繊維を切断せず変形させるため、強度の高いねじが得られます。
スレッドミルと呼ばれる工具をフライス盤にセットし、下穴の側面を切削してめねじを形成する方法です。同じピッチであれば1本のスレッドミルで複数のねじサイズの加工が可能で、右ねじ左ねじの両方に対応できるという利点があります。
電気の力を利用してめねじを加工する方法で、ねじの形をした電極をセットし、放電の熱により材料を溶かしながらめねじを形成します。焼き入れ後の硬い材料でも加工可能ですが、加工速度が遅く、コストが高いというデメリットがあります。
加工方法の選択は、材質、精度要求、生産量、コストなどを考慮して行います。例えば、少量生産の場合は旋削加工、大量生産の場合はタップや転造加工が適しています。また、硬い材料や特殊な形状のネジには放電加工が適していることがあります。
旋盤加工の中でも、小径ネジ、台形ネジ、多条ネジの加工は特に高い技術と経験を要する難易度の高い作業です。これらの特殊なネジ加工について詳しく見ていきましょう。
小径ネジの加工技術
小径ネジとは、直径が小さいネジのことで、一般的に5mm以下のものを指します。小径ネジの加工では以下の点に注意が必要です:
小径ネジの加工では、高精度な旋盤と熟練した技術者の経験が重要となります。
台形ネジの加工技術
台形ネジは、ねじ山の断面が台形状になっているネジで、一般的な三角ねじに比べて以下の特徴があります:
台形ネジの加工では、専用のバイトを使用し、切削角度や切込み量を慎重に設定する必要があります。特に内径の台形ねじ(めねじ)は、通常のめねじよりもさらに難易度が高くなります。
多条ネジの加工技術
多条ネジとは、2本以上のらせん溝で構成されたネジのことで、一般的な1条ねじに比べて以下の特徴があります:
多条ねじの加工では、通常のねじ加工よりも送りを早くする必要があるため、工具の折損リスクが高まります。そのため、工具の剛性確保や適切な切削条件の設定が特に重要になります。
小径・台形・二条ねじの複合加工
これらの要素が組み合わさった「小径かつ台形の二条ねじ」は、旋盤加工の中でも最も難易度の高い加工の一つです。このような特殊なネジ加工では、以下の点が重要になります:
このような高難度のネジ加工は、一般的な加工会社では敬遠されることもありますが、専門の技術と設備を持つ会社であれば対応可能です。依頼する際は、加工会社の技術力や実績を確認することが重要です。
めねじ加工は、おねじ加工に比べて難易度が高い作業です。ここでは、旋盤を使用しためねじ加工の基本的な手順と注意点について詳しく解説します。
めねじ加工の基本手順
めねじ加工の第一歩は、正確な位置に穴を開けることです。全自動機械の場合はマシニングセンタに位置を設定しますが、手動の場合は罫書きで印をつけ、ポンチで表面をへこませて位置をマークします。位置決めの精度がその後の加工精度に大きく影響するため、慎重に行う必要があります。
キリ(ドリル)を使用して下穴を開けます。下穴の径は、めねじの呼び径に応じた適切なサイズにする必要があります。例えば、M10のめねじを加工する場合、下穴径は約8.5mmが目安となります。下穴の精度はタップの精度に直結するため、穴の角度や位置に注意して加工します。
下穴が完成したら、工具をドリルからタップに交換します。タップには手動用と機械用があり、用途に応じて適切なものを選択します。
タップの軸心と下穴の軸心を正確に合わせます。この位置合わせが不正確だと、ねじ山が傾いたり、タップが折れたりする原因となります。特に入口部分が重要で、一度ずれると修正が困難になるため、慎重に行います。
タップには切削油を塗りながら加工を行います。切削油は刃をスムーズに切り込ませ、刃の目詰まりを防止する役割があります。手動でタップを切る場合は、固くなってきたらタップを少し戻し、また切るという動作を繰り返して加工します。
めねじ加工の注意点
下穴径が小さすぎるとタップに負荷がかかりすぎて折れる原因となり、大きすぎるとねじ山が十分に形成されず、強度不足になります。めねじの呼び径とピッチに応じた適切な下穴径を選択することが重要です。
タップ加工では必ず切削油を使用します。切削油は以下の役割を果たします:
タップは比較的折れやすい工具です。折損を防ぐために以下の点に注意します:
めねじ加工後は、ねじゲージやプラグゲージを使用して精度を確認します。特に以下の点をチェックします:
めねじ加工後、穴の入口や出口にバリが発生することがあります。これらのバリは面取り工具などを使用して除去し、仕上げます。
めねじ加工は見えない部分での作業となるため、経験と技術が特に重要です。適切な工具の選定、正確な位置決め、適切な加工条件の設定など、細部にわたる注意が必要な加工技術と言えます。