間欠切削の効果と切削抵抗の低減方法

間欠切削は切削工具の寿命延長や加工精度向上に効果的な加工方法です。本記事では間欠切削のメリットやデメリット、適切な使用条件について詳しく解説します。あなたの工場でも間欠切削を取り入れて生産性を向上させてみませんか?

間欠切削の効果

間欠切削の主な効果
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切削抵抗の低減

工具と被削材の接触時間が減少することで切削抵抗が低減され、工具寿命が延長します

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熱の分散効果

間欠的な切削により切削熱が分散され、工具の摩耗や被削材の変形を抑制できます

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切りくず処理の改善

切りくずが細かく分断されるため、切りくず処理が容易になり加工効率が向上します

間欠切削とは、工具が被削材と常に接触している状態ではなく、断続的に接触と非接触を繰り返す切削方法です。この加工方法は、連続切削と比較して様々な利点をもたらします。特に切削抵抗の低減や工具寿命の延長、加工精度の向上などの効果が期待できます。

 

間欠切削は、旋削加工フライス加工など様々な切削加工で応用されており、特に難削材や高硬度材料の加工において有効です。工具と被削材の接触時間が減少することで、切削熱の発生を抑制し、工具の摩耗を軽減することができます。

 

間欠切削による切削抵抗の低減効果

間欠切削の最も重要な効果の一つが切削抵抗の低減です。通常の連続切削では、工具が常に被削材と接触しているため、切削抵抗が持続的に発生します。これに対して間欠切削では、工具が被削材から一時的に離れる瞬間があるため、切削抵抗の平均値が低下します。

 

研究によると、すくい角を付けた工具を使用した場合、間欠切削によって約8%の切削抵抗低減効果が認められています。これは工具寿命の延長や加工精度の向上に直接つながる重要な効果です。

 

間欠切削では切削抵抗の変動値は大きくなる傾向がありますが、最大主分力(切削方向の力)は小さくなります。これにより、工具への負荷が軽減され、特に微細加工や精密加工において有利に働きます。

 

具体的な間欠送りの方法としては、例えば「0.1mm切削して、0.1mm戻す」といった動作を繰り返すことで実現できます。被削材の特性によっては、切削長さを調整することで加工能率の向上も期待できます。

 

間欠切削と高速切削の違いと工具摩耗への影響

間欠切削と高速切削は、どちらも切削抵抗を低減する効果がありますが、そのメカニズムは異なります。高速切削は切削速度を上げることで切削熱を切りくずに逃がし、工具摩耗を抑制します。一方、間欠切削は工具と被削材の接触時間を減らすことで熱の蓄積を防ぎます。

 

間欠切削が工具摩耗に与える影響については、特にPcBN(多結晶立方晶窒化ホウ素)などの超硬工具を使用した場合に顕著です。研究によれば、間欠切削時には衝撃荷重により最大で40%程度の切削力の増加が見られることがあります。これは工具の破損リスクを高める要因となりますが、適切な工具選定と切削条件の最適化によって回避できます。

 

高硬度材料の加工では、BL型PcBN工具を使用する場合、低速での間欠切削では微小チッピングや脆性破壊が発生しやすいですが、切削速度を210m/min程度まで上げることで摩耗パターンが変化し、安定した加工が可能になるという研究結果もあります。

 

間欠切削のフライス加工における同時切削刃数の最適化

フライス加工における間欠切削では、同時切削刃数の最適化が重要なポイントとなります。同時切削刃数とは、加工中に同時に被削材と接触している刃の数を指します。

 

同時切削刃数が多すぎると切削抵抗が増大し、びびり振動が発生しやすくなります。特に被削材の切削幅が広い場合、多刃仕様のカッタを使用すると同時切削刃数が増えすぎて問題が生じることがあります。

 

一方で、同時切削刃数が少なすぎる(特に0刃になる場合)も避けるべきです。同時切削刃数が1刃~0刃の場合、切削抵抗の変動値が大きくなり、振動が発生しやすくなります。理想的には同時切削刃数が2刃~1刃の範囲に収まるようにすることで、切削抵抗の変動差を小さくし、振動を抑制できます。

 

被削材の幅が狭い場合の対策としては、多刃仕様(クロスピッチ)のカッタを使用することで同時切削刃数を確保することが有効です。逆に被削材の幅が広い場合は、以下の対策が考えられます:

  1. 事前に被削材の剛性や切削動力を計算し、機械の出力値を下回っているか確認する
  2. 切込み条件を下げる(例:3mmから1mmへ)
  3. 偶数刃の場合は1枚おきにインサートを間引く(例:8枚刃→4枚刃)

これらの対策により、間欠切削における振動問題を効果的に回避することができます。

 

間欠切削を活用した超音波振動切削の効果

間欠切削の応用技術として、超音波振動切削があります。これは切削工具に超音波振動を加えることで、微細な間欠切削状態を人工的に作り出す方法です。

 

超音波振動切削は、切削抵抗をゼロを中心として加振させることにより、工具寿命や仕上げ面粗さの向上効果を引き出すことができます。しかし、切削抵抗が極めて大きい場合には、切削抵抗をゼロ中心で加振させることが困難になります。このような場合、切削工具の間欠送りを併用することが有効な方法となります。

 

間欠送りを行うことで、切りくずを細断し、工具すくい面上の切りくず量を減少させることができます。これにより、超音波振動での加振効果が高まり、切削抵抗をゼロを中心とした変動に近づけることが期待できます。特にすくい角を設けた切削工具を用いた場合、間欠送りとの組み合わせで良好な切削抵抗低減効果が得られます。

 

超音波振動切削と間欠送りの組み合わせは、微細加工や難削材加工において特に効果を発揮します。例えば3mm以下の微細異形穴や溝の高精度加工において、工具摩耗の軽減やバリ発生の抑制に貢献します。

 

間欠切削の電界研磨処理による工具寿命延長技術

間欠切削における工具の耐久性向上のための新技術として、電界研磨処理(Electric Field Polishing: EFP)が注目されています。これは切削工具の刃先を電界砥粒制御技術により研磨することで、刃先摩耗量を低減する方法です。

 

研究によれば、高硬度鋼の軸受鋼(SUJ2)をcBN工具で旋削する場合、切削前に予め刃先研磨を行うことで、研磨なしの工具と比較して逃げ面摩耗量が低減されることが確認されています。また、軟鋼系のS25Cを被削材とし、サーメット工具を用いた場合でも同様の効果が得られています。

 

電界研磨処理を施した工具の刃先は、小さな傷や研削痕が除去され、より滑らかな表面となります。これにより、特に間欠切削のような衝撃負荷がかかる条件下でも、工具の耐久性が向上します。

 

間欠切削では工具刃先に繰り返し衝撃が加わるため、通常の連続切削よりも工具摩耗が進行しやすいという課題があります。電界研磨処理はこの課題を解決する有効な手段となり得ます。特に高精度加工や難削材加工において、工具コストの削減や加工精度の向上に貢献することが期待されています。

 

さらに、振動磁気研磨処理を追加することで、工具表面の粗さを低減し、適切な刃先丸みを形成することができます。これにより、PcBN BL工具の破壊確率を最大2倍程度低減できるという研究結果もあります。

 

間欠切削は、適切な工具選定と切削条件の最適化によって、その効果を最大限に引き出すことができます。切削抵抗の低減、工具寿命の延長、加工精度の向上など、多くのメリットをもたらす一方で、衝撃荷重による工具破損リスクなどのデメリットも考慮する必要があります。

 

特に高硬度材料や難削材の加工においては、間欠切削と超音波振動切削の組み合わせや、電界研磨処理による工具の前処理など、最新の技術を活用することで、より効率的で高精度な加工を実現することができます。

 

また、フライス加工における同時切削刃数の最適化は、間欠切削の効果を最大化するための重要なポイントです。被削材の特性や加工条件に応じて、適切な工具選定と切削パラメータの調整を行うことが成功の鍵となります。

 

間欠切削は、単なる加工方法の一つではなく、現代の高精度・高効率加工を支える重要な技術の一つと言えるでしょう。今後も新たな研究や技術開発によって、さらなる可能性が広がることが期待されます。